読書百遍

会計・税務プロフェッションを目指している人の日々是好日

【連載】修士論文審査に落ちましたが、なにか? Vol.5

第5回 書評 細川健「租税法修士論文の書き方」白桃書房2020年全143頁

 ネットで文献検索中に偶然見つけた文献ですが、すぐ最寄りの書店で内容確認し購入して通読しました。


 学術書で時々思うのが、出版社のページ見ても目次が載っていなかったりすることが多いです。学術的な研究目的で購入する人は内容と構成は必ず確認するので、目次もネットで確認できるようにしてほしいです。たまにアマゾンで確認できるものもありますが、新書は載っていないことが多いんです。


 今ではすっかり奥付(巻末の著者や版などが記載されている場所)からはしがき、目次、あとがき、本文の順で読む癖がつきました。


 本書は、実際に会計専門職大大学院で社会人院生を数多く論文指導をされた教授が書かれた税法論文の執筆方法についての書籍です。実際の指導教授によるハウツー本は、今までなかったため、税理士2科目免除を目指す方で大学院進学を考えている方は全員一家に1冊置いてもよい良書だと思います。本文は全143頁と1時間で通読ができる分量で軽いく、内容は7章立てで以下の構成となっています。


目次
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.テーマ 選択方法と引用文献等の探し方と読み方・・・・・・・1
2.序論 フォーマットとその具体的な書き方・・・・・・・・・・13
3.判決文等 最も確実なまとめ方・・・・・・・・・・・・・・・35
4.先行研究 最も確実なまとめ方・・・・・・・・・・・・・・・41
5.結論・要旨の書き方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47
6.修士論文作成上の基本ルール・・・・・・・・・・・・・・・・55
7.修士論文の執筆上の注意点・・・・・・・・・・・・・・・・・73
引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・96
参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・97
附録(著者による修士論文の執筆例)・・・・・・・・・・・・・99


実際に学会雑誌「税法学」に記載された著者の論文を掲載したり、論文の内容を例として使いながら、指導内容に触れている点は、何をしたらいいか分からない人にイメージを持たせ、内容を理解する助けになると思います。著者も実際に言及していますが、納得できるところだけ使ってもよいという点で、書かれていることすべてを盲目的に受け入れる必要はありません。しかし、数多くの卒業者や挫折者を直に見てきた教授が失敗しないために気を付けるべき点や初学者が陥りやすい失敗例などについて書いており、実際に会計専門職大学院で経験した者としては思い当たる点がありすぎて身につまされる思いでした。


 ある程度勘がよい学生には、物足りない内容かもしれませんが、思考が停止しやすい方は迷わず買っておくとよいです。一度挫折した後に、先生を頼ることをやめて自分で考えてやっていたことがほとんど書かれていたので、時間や効率、質を考えて動けば行き着く先は同じなのだという意味で、自分がやっていることに間違いがないという確証を得る上で役に立ちました。


 私が指導してほしかった指導教授は、論文執筆方法についての門外不出の秘伝書をお持ちという噂もありますが、専門職大学院は大学院とは異なるので指導教授を選べないため、入学前のリサーチも無駄になってしまいました。学びたい教授がいるかは進学先を決める上で重要ですが、専門職大学院は大学院と異なり指導教授は必ずしも選べないという点にご注意ください。
 
だからこそ、これから入学される方は、一人でも頑張れる指標としてこの本を持っておくとよいと思いました。最低でも正しい道を一つ示して貰えば、最悪その道を辿れば何とかゴールにたどり着けるという安心感は与えられます。お守りがわりです。